外国籍児童
就学支援研究会
1 外国籍児童就学支援研究会について
(1)研究会設置の目的
長野県内における外国籍児童生徒の就学状況、県内母国語教室の実態、国・県・市町村が行っている外国籍児童学支援施策、支援団体が行っている外国籍児童就学支援活動及び県内母国語教室の実態を把握し、今後のサンタ・プロジェクトの活動のあり方及び外国籍児童生徒の就学支援に関する政策提言のための研究・検討を行い、その結果を外国籍児童支援会議に報告する。
(2)研究内容
ア 母国語教室の実態把握
イ 外国籍児童生徒の就学状況及び行政が行っている外国籍児童就学支援施策の把握
ウ ボランティアや支援団体が行っている外国籍児童就学支援活動の把握
エ サンタ・プロジェクトにおける有効的な資金確保の方策検討
オ サンタ・プロジェクトにおける外国籍児童生徒への支援スキームの課題検討及び新たな支援スキームの研究
カ 外国籍児童支援関係者のネットワークづくりに向けた検討
キ 外国籍児童就学支援に関する行政への政策提言に向けた検討
(3)設置日
平成18年12月13日
(4)研究会委員(平成20年12月現在)
| 区 分 | 氏 名 | 所 属 団 体 |
| 座長 | 川村修平 | 財団法人岡谷市国際交流協会常務理事 |
| 副座長 | 徳井厚子 | 信州大学教育学部国際理解教育分野准教授 |
| 委員 | 西沢 毅 | 上田市国際交流協議会会長 |
| 委員 | 本郷英毅 | タケムラブループ会長 |
| 委員 | 立石惠子 | 長野県フリーマーケットネットワーク・フリマネット信州代表 |
| 委員 | 藤本純子 | 特定非営利活動法人伊那国際交流協会 |
| 委員 | 伊東信子 | 社団法人長野国際親善クラブ副会長 |
| 委員 | 赤羽節夫 | 社団法人信濃教育会小学校英語活動研究調査委員会委員長 |
| 委員 | 磯貝勇悟 | 社団法人長野県経営者協会教育研修部次長 |
| 委員 | 中山千弘 | 日本労働組合総連合会長野県連合会副事務局長 |
| オブザーバー | 池田防守 | 社団法人長野県経営者協会、外国籍児童支援会議会長 |
| オブザーバー | 佐藤守賢 | 長野県企画部人権・男女共同参画課長 |
| オブザーバー | 山本高明 | 長野県総務部情報公開・私学課長 |
| オブザーバー | 荒深重徳 | 長野県教育委員会義務教育課長 |
(5)開催経過
[第1回研究会 平成18年12月13日]
1 設置目的説明
2 座長、副座長選出
3 外国籍児童支援会議の援助事業内容の説明
4 研究テーマの選定
5 今後のスケジュール
[第2回研究会 平成19年2月21日]
1 母国語教室ピタゴラス(東御市)、上田東小学校プレスクール視察
2 就学支援の基本的考え方の整理
3 母国語教室と保護者へのアンケートを実施し、次回研究会で発表
[第3回研究会 平成19年11月15日]
1 箕輪北小学校、あしなが学園視察報告
2 母国語教室及び保護者へのアンケート結果
3 就学支援の基本的考え方及び小中学校と母国語教室の役割
[第4回研究会 平成20年3月28日]
1 母国語教室の学校法人化
2 中間報告素案
3 平成20年度のスケジュール
[第5回研究会 平成20年8月21日]
1 母国語教室ノヴァ・ダマスコ(上田市)、上田東小学校プレスクール視察
2 母国語教室と地域社会との交流促進
3 外国籍県民実態調査結果報告
[第6回研究会 平成20年12月5日]
1 外国籍児童への支援の在り方
[第7回研究会 平成21年3月9日]
1 外国籍児童への支援の在り方
2 支援の枠組み
2 提言書案検討
2 外国籍児童支援会議(サンタ・プロジェクト)について
School Attendance Support Project for Non-Jpanese Children To Offer Aid=SANTA
(1)発足の経緯
長野県内には4万人を超える外国籍県民が在住しており、言葉や生活習慣などの違いから、日本での日常生活を送る上でいろいろな問題が生じています。特に、子どもたちの教育について、年齢的には日本の小中学校に通う年頃の外国籍の子どもたちのうち、学校での教育を受けていない子どもたちがたくさんいることがわかってきた。
教育を受ける機会は、「子どもの権利条約」等にうたわれているとおり、国籍に関係なく平等に与えられなければならない。
県内では、外国籍県民の皆さんが自ら教室を開き、外国籍の子どもたちに、子どもたちの母国語で教育を行う「母国語教室」(ブラジル人学校)が開設されている。
しかしながら、これら「母国語教室」は、日本の現行制度下(憲法第89条の制約など)では何ら公的な支援が受けられない状況にあるため、母国語教室の経営は厳しい状況にあるだけでなく、授業料、給食費、教科書代等、外国籍児童生徒の家庭にのしかかる負担は著しく大きいものとなっている。
そこで、平成14年10月「外国籍児童就学援助委員会」を立ち上げ、皆様からのご寄付により 母国語教室で学ぶ子どもたちの援助を始めた。これをサンタ・プロジェクトという。
サンタ・プロジェクト発足後3年間は、経済団体を中心に募金活動を行ってまいりましたが、必ずしも県民の皆さんの幅広い理解を得た「県民運動」にまでは至っておらず、この取り組みの存在自体もなかなか知られていなかった。また、募金も限られた企業や団体に支えられている現状と言わざるを得ない状態であった。
このようなことから、広く県民の皆様にご理解とご支援をいただける運動に転換を図るため、県内各界各層に呼びかけ、関係団体や国際交流団体などの参画を得て、平成17年12月21日「外国籍児童支援会議」を設立し、サンタ・プロジェクトの活動を「外国籍児童就学援助委員会」から引き継いだところである。
(2)外国籍児童支援会議の概要
目的:長野県内における外国籍児童の就学を援助し、その教育の機会及び福祉の増進を図る。
会長:池田 防守 (社団法人長野県経営者協会)
構成団体:39団体(経済団体、国際交流団体、支援団体、報道機関など)
賛助会員:98法人 8個人
| 主な収入の状況: | @ 一般寄附、街頭募金等 A 賛助会費 B 県負担金 |
2,413,855円 3,606,000円 3,500,000円 |
合 計 |
9,521,855円 |
(3)外国籍児童支援会議の支援内容
会議は、経済的に困難な状況にある外国籍児童に対する就学援助金の支給や、母国語教室の教育環境向上のための助成金、教材・機器等の提供を行う。
ア 外国籍児童就学援助金
以下の要件に該当する外国籍児童に、選考の上、毎月30名程度に月額2万円(特別援助金)
または月額1万円(普通援助金)を支給
@ 6歳以上15歳以下であること。A 母国語教室に就学する予定または既に就学していること。B 経済的に就学が困難であること。
イ 母国語教室整備助成金
外国籍児童の教育環境の充実を目的として、その施設・設備などを整備する母国語教室に、選
考の上、年間10校程度に、1校あたり年額20万円を限度に支給
ウ 教科書購入助成金
学齢期児童のうち、教科書を購入する児童・生徒に対し、1人当たり年額1万円を限度に予算の範囲内で交付。
エ 外国籍児童就学支援事業助成金
外国籍市民支援団体(日本語教室・リソースセンター等)が行う外国籍児童生徒を就学させるために支援している事業に対し、1事業あたり5万円を限度に、概ね10事業を対象に交付。
オ 母国語教室等への教材・機器等の提供
母国語教室等が必要としているノート、本、パソコンなどの皆様からの提供について、コーディネート。
3 外国籍児童生徒等の現状について
(1)外国籍県民の現状
近年、国際化の進展に伴い、外国籍県民は増加している。
長野県内の外国人登録者数(県国際課調べ)は、平成元年月末には8,646人であったが、年々増加し、平成19年末には43,044人で、約5倍となっている。
特にブラジル人の増加は著しく、平成元年末には233人であったが、平成19年末では15,595人と約67倍に急増している。これは平成2年の出入国管理及び難民認定法(入管法)の改正により、いわゆる日系2世、3世が「定住者」として入国できるようになり、その定住者資格には活動制限がないことからほとんどのブラジル人は就労目的に入国している。また、そのブラジル人は、滞在の長期化が顕著になってきており、永住資格に切り替えるなど定住化が進んできている。
また、日本の事情としても少子高齢化に伴い、いわゆる単純労務への労働力不足を補う意味で、今後も外国人労働者は増加することが見込まれる。特に長野県は全国的に見ても外国人登録者に占めるブラジル人の比率が多い。理由としては、ブラジル人が県内の製造業の非熟練労働者として、派遣会社からの間接雇用の形態で雇用されていることが多いからではと思われる。

(2)外国籍児童生徒の現状
県内の外国籍児童生徒数の推移は次のとおり。(各5月1日現在)
| 小学校 | 平成元年338人→平成20年1,207人 3.6倍 内日本語指導が必要な児童生徒 平成11年468人→平成20年451人 |
| 中学校 | 平成元年163人→平成20年551人 3.4倍 内日本語指導が必要な児童生徒 平成11年249人→平成20年158人 |
ア 小中学校
県内で外国人登録(平成20年5月1日現在)をしている学齢期(6歳から15歳)の外国籍児童生徒数は2,703人でうち国公立・私立の小中学校に就学する児童生徒数は、1,773人である。
@県教育委員会の支援
○教員の配置
-
- 通級方式による日本語指導教室設置校への支援
- 内容:一部特別なカリキュラムで学習指導や社会での生活を円滑にするための日本語取得を目指す
-
- 外国籍児童生徒が多く在籍する学校への支援
- 内容:TT教員を配置し、学習指導に重点を置きつつ、生活支援をする
- 中国帰国子女の教室への支援
Aプレスクール(集中日本語教室)
○県教育委員会と上田市のモデル事業
来日間もない子どもたちの教室を設け、日本語の挨拶、身の回りの物の名前、日本語での簡単なコミュニケーションなどを習い、早く日本の学校になれるために準備をする。
-
- バイリンガル教員(各1名)の配置
- 上田東小学校 虹のかけはし東小教室 H18.8〜
- 上田南小学校 虹のかけはし南小教室 H19.5〜
イ 私学教育
私立各種学校として認可されている長野朝鮮初中級学校(松本市)においては、平成20年5月現在70人の学齢期の子どもたちが朝鮮語による教育を受けている。この学校は、運営経費に対する県からの助成措置や税金の優遇措置が受けられる。
ウ 母国語教室
県内には、平成20年6月現在10校の母国語教室があり、そこでは学齢期の子どもたち327人がポルトガル語による授業を受けている。
母国語教室はいわゆる私塾で、ブラジル人を対象にポルトガル語による教育をしている。教科書は母国から直接取り寄せ、母国の教育課程に準じて教育をしており、スクールバスの運行、給食やおやつの支給、夜間も預るなど、託児所や児童館的役割も併せ持っている。教室は空き店舗等を改修して利用している。
これらの母国語教室は、外国籍の子どもたちの不就学の解消に一役を担っているが、派遣会社の都合による児童生徒数の増減の影響等を受けるなど、経営的に不安定な状況にある。
それは、日本の現行制度下において、母国語教室は行政からの公的な支援を受けられないこと、また、ブラジル政府から認可を受けても本国政府からの財政的支援がないことが大きく影響しており、結果として経営基盤の脆弱な母国語教室は、授業料を高額に設定せざるを得ない状況にある。
また、ブラジル政府の認可を受けている母国語教室の6校(他に申請中は2校)については、子どもたちが本国に帰国した際、相当の学年に就学できる利点がある。

エ 日本語教室
県内には、平成20年4月現在、県で把握できている日本語教室は55校、親と子の日本語教室6校で計61校ある。
日本語教室は、市町村や国際交流団体、支援するボランティア等が運営し、平日の夜や土日に開設しているところが多い。講師はほとんどがボランティア。生徒は多国籍。学校生活や家庭生活などでコミュニケーション不足による不自由をきたしている外国籍県民等が、学校帰り、職場帰りや休日に通う。授業は日本語で、指導法には間接法と直説法があるが、ほとんど直説法によって指導している。
オ 日本語学習リソースセンター
県内には、平成20年4月現在、日本語学習リソースセンターが7箇所あり、日本語教材が1,834冊整備されている。
リソースセンターは、小中学校の日本語指導教員や日本語教室の指導者が使用する専門の教材を閲覧でき、教材選びや独自の教材づくりに役立てるため平成15年度から設置されている。
カ 東京外語大学多言語・多文化研究センター
研究センターでは在日ブラジル人児童のための教材を開発し、無料で提供している。
ポルトガル語による説明や翻訳の解説が入った漢字、算数、理科の教材を大学のホームページからダウンロードできる。
キ 長野県立図書館
外国図書(ブラジル、中国、フィリピン、韓国、タイ)を整備し、閲覧貸し出しをしている。
平成19年度末で2,738冊整備されている。

ク 不就学児童生徒数
学校教育法に定められる「学校」や「母国語教室」に通っていない、いわゆる「不就学児童生徒」の数は535人(平成20年5月1日現在)と推計される。
また、言葉の壁や習慣の違いから、学校に在籍していても実際に通っていない児童生徒がいる実態を考慮すれば、不就学の状況は深刻であると思われる。

4 外国籍児童生徒の権利や国の基本的な考え方について
(1)学ぶ権利と就学の義務
日本は、国際人権法(「社会権規約第13条」、「子どもの権利条約第28条」)上、外国籍児童生徒の「教育への権利」を明文で保障している。
また、日本の教育については、日本国憲法第26条第2項に「すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。」と定められており、この規定に基づく教育を「義務教育」と呼称している。そのため、保護者は、学齢期の人を小中学校などに通学するように取り計らう義務がある。これを就学義務(就学させる義務)という。
(2)国の考え方
総務省の多文化共生の推進に関する研究会の報告書(2006年3月)では、外国籍児童生徒の教育について、『日本は「国際人権規約及び子どもの権利条約」を批准していることから、外国人児童生徒が公立義務教育への就学を希望すれば、日本人と同様に無償で受け入れることとしている。また、教育を受ける場として外国人学校を選択することも可能である。
しかし、現実には、ニューカマーの子どもの教育について、日本語習得の困難や不就学問題など、さまざまな課題を生じている。今後は国では、以下のような取り組みをする必要がある。』と述べている。
ア 基本的な考え方の提示
まず、国の責務として、すべての子どもに教育を受ける機会が実質的に保障されるように、外国人児童生徒の教育のあり方についての基本的な考え方を示す必要がある(例えば学習指導要領に外国人児童生徒教育を明確に位置づけるなど)。
あわせて、外国人児童生徒教育に関わる国、都道府県、市区町村等の費用負担のあり方についても検討する必要がある。
イ 外国人児童生徒に対する日本語教育方法の確立
JSLカリキュラムの更なる開発・普及を行なう。日本語教育を専門とする教員の養成、大学の教員養成課程における日本語関連科目や外国人児童生徒教育に関する科目の設置について検討する。
また、日本語教育方法の確立には、外国人に対する日本語教育のノウハウを有する関係機関(国際交流基金や文化庁など)の連携も必要である。
ウ 不就学の子どもへの対応
全国的な実態把握(きめ細かい、継続した)を行なった上で、不就学の子どもを減少させる方策を早急に講じることが必要である。また、在留資格付与・更新の用件として、子どもの就学を定めることの是非について、諸外国の事例も参考に検討する。
エ 外国人学校のあり方の検討
各種学校として認可された外国人学校への財政支援のあり方を、他の私学助成と比較しつつ検討する必要がある。中長期的には、外国人学校の法的位置づけのあり方について検討する必要もある。
5 不就学の要因と学校の選択について
「子どもの権利条約」でもうたわれているように、教育を受ける機会は国籍に関わりなく、均しく与えられなくてはならない。現在日本人の子どもたちのほとんどがあたりまえに受けている教育を、外国籍の子どもたちが満足に受けられていない状況がある。また「学校」に籍は置いているものの、学校生活に馴染めないことなどから長期に学校に通っていない児童がいることも考慮すれば、実態はより深刻であると思料される。
(1)不就学理由
学校に通わない不就学児童生徒について整理してみると、@言葉の問題や日本の生活習慣等に不慣れなままに子どもを日本の学校に入学させることの不安、A日本の学校では母語や母国で行われている学習ができないことへの諦め、B父母における子どもに対する初等・中等教育の重要性についての認識の欠如、以上の3点が見えてくる。これらを外国籍児童生徒の不就学問題の根底をなす社会的要因であり、これに加えて、@生活基盤の不定さ(親の失業、転職など)、A授業料が高いなど、経済的要因が子どもたちの不就学問題の発生原因を形成しているのではないかと考えられる。
(2)小中学校と母国語教室の選択
県内に在住する外国籍の学齢期の子どもたちの保護者は、日本社会で進学や就職をし、日本社会で生きて行くことを選択している場合は、日本の小中学校での就学を選んでいる。
帰国後ブラジル社会で生きて行くことを選択している保護者は、その子どもたちには母国語教室においてポルトガル語による教育を受けさせている。
また、日本の中の朝鮮・韓国コミュニティーで生きて行く決断をした子どもたちには、長野朝鮮初中級学校(松本市)という就学場所が県内にはある。
これら以外の出身者たちは、好むと好まざるとに関わらず選択の幅はなく、日本の小中学校のみしか学ぶ場がない。
将来、子どもたちが「どの国で生きて行くか」が、教育の場を選ぶ重要なポイントとなることは間違いないことである。
6 母国語教室の学校法人化について
(1)私立学校等の設置等に関する審査基準の緩和
ア 緩和の経過
平成15年12月25日付け文部科学省次官通達及び局長通達
生徒定数 150人→80人
基本財産 自己所有→特別の事情を知事が認め得る(借用の校舎)
イ 今回の改正の内容
平成19年12月開催の私立学校審議会において、審査基準のうち資金保有要件の基準緩和が決定される
【校地借用の場合】
開設年度の経常経費に相当する程度の額の自己資金を保有していること。→開設年度の経常経費の6分の1(2ヶ月)に相当する程度の額の自己資金を保有していること。(上記の認可要件については、市町村が外国人学校の設置を要望しており、設置された外国人学校の経営に著しい支障が生じた場合に、当該市町村が、当該学校に在学する者の適切な就学を維持することができるよう、転学の斡旋等の措置を講ずることを明確にしている場合、適用する。
その他の要件として、本国政府から、学校としての認定を受けていること。
ウ 改正の目的
未就学問題をはじめとして、外国籍児童生徒の教育を取り巻く諸問題が生じている中、外国籍児童の教育の受け皿としての母国語教室の果たしている社会的役割は大きく、教育環境の整備は重要な問題である。
このため、各種学校のうち、外国人学校の認可要件(資金保有要件)を緩和することにより、無認可の母国語教室の学校法人化を促進し、教育環境の向上を図ると共に、外国籍児童生徒の不就学の解消と就学支援を図る。
エ 各種学校認可を受けた場合の効果
@学校の永続性を担保できること。
A税制上の優遇措置が適用されること。(法人税、所得税、登録免許税、住民税、事業税の非課税)ただし、税制上の優遇措置を受けるには、同時に学校法人を設立が必要。
B通学定期乗車券の運賃割引の適用
(2)母国語教室への説明
平成15年6月及び平成16年3月に、生徒定数基準の緩和、基本財産基準の緩和について説明した。
今回の改正についても平成20年3月にポルトガル語による説明資料を送付した。3月に説明を受けたあと申請を希望する学校がある場合、認可までは以下のスケジュールとなる。
【校舎を新築する場合の例】
申請の受付 平成20年6月→最終審査 平成21年10月→各種学校認可 平成21年10月
【校舎の建築工事が不要な場合の例】
申請の受付 平成20年6月→最終審査 平成20年12月→各種学校認可 平成20年12月
(3)各種学校認可後の課題
学校の運営経費に対し助成措置がある。現在は長野朝鮮初中級学校に対し、私立外国人学校教育振興費補助金を交付している。これは、義務教育就学年齢の児童生徒1人に付き年額40,590円を補助するものである。
この補助金は予算措置で決まる助成金であるため、母国語教室が各種学校と認可されても自動的に対象になる制度ではないとのことから、県においては、学校法人化により各種学校認可された母国語教室への財政支援について、早急に検討に着手することが望ましい
7 母国語教室と地域社会との交流促進について
(1)地域の学校との交流
母国語教室で学んでいるブラジルの子どもたちは、地元の同世代の日本の子どもたちとの交流が不足しているのではないか。こうしたことが、地域に存在しながら「地域から孤立したブラジル人学校」になってしまう大きな要因といえる。
また、公立小中学校でも、「総合学習」「国際理解」等の授業が行われているが、身近に異なった文化を持つ子どもたちがいることに気付かない教師や児童生徒が多い。
母国語教室と地域の小中学校が相互理解を行うためには、交流、体験、経験から学ぶことが必要で、その推進役には海外経験や国際貢献した教師、国際交流に理解のある学校長が重要な役目を果たすと考えられる。
交流にあたっては、交流を継続させることの重要性を考えると、「学年ごと」「スポーツを通じて」「給食体験」など、楽しみながら参加できる交流のきっかけを作り、息の長い交流に発展することが望まれる。
(2)地域社会との交流
県内の母国語教室は、それぞれの地域に住むブラジル人子弟の教育の必要性から誕生しているが、地域の日本人住民からみると、その存在は「不思議なモノ」として映っているかもしれない。
これら母国語教室が、ブラジル人コミュニティーを形成し、地域から孤立する存在となるのでなく、地域の一員として共存していくためには、地元住民に母国語教室の取組みを公開し、実情を見てもらうことや母語での教育が必要であることを知ってもらう努力やブラジル料理教室を開催するなど異文化交流を通じて相互理解していく努力も必要である。さらに、教室の教師や生徒も地域活動に積極的に参加していくことも大事である。
また、地域と教室を取り結ぶそれぞれのキーパーソンの存在も重要である。
8 外国籍児童生徒への支援の在り方について
(1) 現在の支援内容の課題と方向性
ア 外国籍児童就学援助金
毎月30名程度に月額2万円(特別援助金)または月額1万円(普通援助金)を支給しているが、近年の雇用情勢の悪化により申請者が増加すること予想されるが、所得格差が反映できる現行制度を継続することが適当である。(文部科学省でも外国人学校に通う児童生徒への個人給付の検討が始まっている。)
イ 母国語教室整備助成金
施設・設備などを整備する母国語教室に、年間10校程度に、1校あたり年額20万円を限度に支給しているが、高価な備品など必要以上の申請が目立ってきていることや施設や教材が程度整備されてきたことから、当面休止としたい。
ウ 教科書購入助成金
教科書を購入する児童・生徒に対し、1人当たり年額1万円を限度に予算の範囲内で交付しているが、日本の義務教育所学校に通う児童生徒は無償であるが、母国語教室ではブラジル本国から教科書を取り寄せるため高額になり、保護者の負担が大変なことから、事業を継続することが望ましい。
エ 外国籍児童就学支援事業助成金
日本語教室等が行う外国籍児童生徒を就学させるために支援している事業に対し、1事業あたり5万円を限度に、概ね10事業を対象に交付しているが、ブラジル以外の国籍の児童への就学支援なので、サンタ・プロジェクトの存在価値を高める助成金であることから、対象事業数か限度額の引き上げや周知方法を検討する必要がある。
また、一目で内容がわかる事業名(例:日本語指導教室支援事業)に変更することを検討する必要もある。
オ 母国語教室等への教材・機器等の提供
母国語教室等が必要としているノート、本、パソコンなどの皆様からの提供について、コーディネートしているが、学校からの要望を聞き、特定の物品を募集するなどの方法を検討することが望まれる。
(2) 新たな支援事業
@ 就学前の幼児については母子保健法の適用により健康診断を受けている。小中学校に就学している児童生徒は学校保健法により健康診断を受けている。母国語教室は私塾であるため法の適応は受けられない。
現在、母国語教室では佐久大学看護学部や長野県看護大学のボランティアにより健康診断を実施している教室は3校あるが、他校は実施していない。
子どもの健康管理は教育を受ける権利と同様に非常に大事であることに鑑み、当支援会議の新しい支援施策として「(仮称)健康診断助成事業」を将来導入するかどうか長期的な視野で検討が必要である。(文部科学省でも研究が予定されている。)
A 12月からの派遣切り、雇止めにより失業する保護者が増え、授業料が払えず、自宅待機となり不就学状態の児童生徒が急増していることから、緊急の不就学解消対策として「緊急援助金」制度を創設する。
平成20年12月から平成21年5月までの保護者の失業者を対象とし、「特別援助金」「普通援助金」の対象児童生徒に月額1万円を加算する。
(3)学校法人化後の対応
母国語教室が県の各種学校認可を受け、学校法人化し、公的助成を受けるに至った場合は、サンタ・プロジェクトの支援対象校から除外することが適当である。
9 支援の枠組みについて
サンタ・プロジェクトを維持していくためには、当然のことながら安定的な資金確保が不可欠である。
現在の財政支援の枠組みは、県からの負担金、企業からは賛助会員として、県民からは賛助会員、一般寄付、街頭募金により構成されている。
設立の経過や目的からも、官民一体となった財政支援が望ましいことから、引き続きこの枠組みを維持していく必要があるが、最近の経済情勢の悪化に伴い賛助会員の減少、募金額の減少、県負担金の減少等財源確保の見通しが大変厳しい状況にあるため、今後、賛助会員拡大や寄付金を増やす具体的な方法について検討する必要がある。
